フランチャイズでの開業をする際の事業形態は、個人事業主か法人かを選ぶ必要があります。
これから独立を考える人は、それぞれの特徴を理解し、最適な選択ができるように知識を蓄えましょう。
この記事では、フランチャイズとして開業する上で、個人事業主と法人の違いやメリット・デメリットを紹介します。
目次
フランチャイズは個人事業主と法人どちらがベスト?
フランチャイズで開業するのなら、個人事業から始めて、ある程度軌道に乗ってから法人化する方法がおすすめです。
しかし、状況によっては始めから法人化するほうがいい場合もあります。どちらがいいのか、ご自身の状況を把握して判断しましょう。
最初は個人事業主から始めるのが無難
フランチャイズでの開業であれば、まずは個人事業主から始めるのが無難でしょう。
開業手続きの簡単さや費用がかからない点から、負担が少なく事業をスタートできるためです。
ある程度の利益が出てきたり、本部やオーナーから教わるビジネスノウハウが増えてきたりしてから法人化する、いわゆる「法人成り」の流れがおすすめ。
開業資金も抑えられるうえ、法人税などの税金面でもっともお得な方法といえるでしょう。
個人事業主と法人の5つの違い
個人事業主と法人には、大きくわけて次の5つの違いがあります。
- 開業費用
- 支払う税金の種類
- 費用の経費計上の範囲
- 社会的な信用
- 自由度
それぞれの違いを理解し、売上や事業拡大の状況に応じて形態を選択することが大切です。
1.開業費用
個人事業主で開業する場合、開業届にともなう費用は発生しません。管轄する税務署へ開業届を提出するだけで開業手続きは完了します。
対して、法人(株式会社)で開業する場合には、最低でも22万円程度の費用が必要です。内訳は以下の通り。
- 登録免許税:15万円
- 定款認証:3〜5万円
- 収入印紙代:4万円
登録免許税とは、株式会社などの設立時の登記(自身の会社であることを記録すること)に必要な税金。
資本金の1,000分の7で計算され、計算結果が15万円に満たないときは15万円が課税されます。
定款認証とは、起業時に作成された定款(会社の規則)が正当な手続きで作られたことを証明することです。
定款の内容に法令違反がないかどうかも合わせて、公証役場で認証してもらいます。
定款認証にかかる手数料は資本金額によって異なり、100万円未満の場合は3万円、100万円以上300万円未満の場合は4万円、その他の場合は5万円が必要です。
収入印紙4万円は、公証人(公証役場で認証してくれる人)の保存する定款原本に貼り付けるために必要です。
ただし、電子定款の場合は必要ありません。
その他、手続きに必要な謄本の発行手数料や代表者印の作成、印鑑登録の証明書など、細かな費用がかかる点も覚えておきましょう。
2.支払う税金の種類
個人事業主と法人では、開業後に支払う税金の種類も異なります。
個人事業主が支払う税金は次の4種類です。
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税
対して法人が支払う税金は以下の5種類。
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 地方法人特別税
- 消費税
個人事業主が4種類に対し、法人では5種類と支払う税金の種類が多いのは法人です。
ただし、売上げによって税金額が変わるため、必ずしも法人のほうが多く税金を支払うことにはなりません。
たとえば、個人事業主が所得額に応じて納税する所得税と、企業が売上に応じて納税する法人税を比べてみましょう。
所得税の場合、個人事業主の所得が1,800万円を超えると税率は40%です。
一方で、一般的な法人(普通法人)でかかる法人税は、売上が年800万円以上になると税率が23.4%で一定になります。
その差を計算すると以下の通りです。
個人事業主の所得税=
所得1,800万円×税率40%=所得税額720万円
法人の法人税=
売上1,800万円×税率23.4%=法人税額421.2万円
所得税額720万円−法人税額421.2万円=298.8万円
このように、売上額(所得額)が同じでも、個人事業主のほうが300万円近くも多く税金を払うことになります。
さらに、従業員を雇うと社会保険料などの納付も必要です。
3.費用の経費計上の範囲
個人事業主も法人も、事業に必要な支出は経費として売上から差し引いて利益を計算します。
個人事業主と法人では、この支出の範囲が異なり、特に大きいのが人件費です。
個人事業主の場合、事業主自身の給料は経費にできません。
対して法人は、事業主(社長)自身の給与や生命保険の保険料、退職金の準備金なども経費として計上することができます。
各種税金は、売上高から費用を差し引いた純利益に応じて課税される仕組みです。
経費として計上できるものが多いほど利益を小さく見せられ、結果的に節税になることも。
場合によっては、法人のほうが個人事業主よりも納税額が安くなることもあります。
4.社会的な信用
個人事業主と法人の大きな違いは、社会的な信用の大きさです。
個人事業主の場合、収入が不安定であることが理由でクレジットカードが作りにくかったり、住宅ローンの審査に落ちやすいといったデメリットがあります。
クレジットカードの作成や住宅ローンの申し込みは、会社員のうちにしておくべきという声があるほどです。
一方で、法人の場合は社会的な信用力が高くなります。
銀行や金融会社からの融資も受けやすくなるだけでなく、営業先からの反応が個人事業主の時より好反応になることも。
また、組織として運営されている印象を与えられることから、継続して任せられるという安心感にもつながります。
5.自由度
個人事業主であれば、ある程度自分の事業に自由な裁量権をもてます。定休日や商品の販売額などが自由に設定できるのも魅力です。
一方で、法人の場合は、定款に記載されている内容に沿って事業を行わなくてはなりません。定款には主に以下の内容が記載されています。
- 事業の目的
- 商号
- 本社所在地
- 資本金額(出資財産額)
- 発起人の氏名と住所
たとえば、個人事業主の場合は、小売業と届け出ていても他の事業を展開することができます。
しかし、法人の場合、事業目的外の事業を行う際には、株主に許可をとったり、税務署への届出(定款の変更届)などの手続きが必要になったりと煩雑です。
やりたい事業やサービスを思いついても、すぐには動き出せないことが法人のデメリットでしょう。
個人事業主でフランチャイズを始めるメリット
個人事業主としてフランチャイズを始めるメリットは以下の通り。
- 開業手続きが簡単
- 利益が少ない間は税金も少ない
- 経理の負担が少ない
1つずつ見ていきましょう。
メリット1.開業手続きが簡単
個人事業主は、開業手続きの簡単さが大きな特徴です。個人事業主は開業のための費用が一切かかりません。
税務署などに開業届を提出するだけですぐに開業できます。
法人を設立する場合には、定款の作成や定款認証の手続きなど、複雑な手続きや膨大な時間が必要です。
さらに、登録免許税などの費用もかかるため、最低でも22万円程度の支出があります。
起業時にかかる費用や開業手続きの煩雑さで比べると、個人事業主のほうが簡単に手続きが完了するところがメリットです。
メリット2.利益が少ない間は税金も少ない
個人事業主・法人どちらでも、所得(利益)に応じて課税される税金があり、個人事業主は所得税が該当します。
利益が少ないうちは、法人より個人事業のほうが税金は少ない傾向です。
事業が軌道に乗るまでは個人事業で運営し、利益が増えてきたら法人化すると節税効果が期待できるでしょう。
事業の状況によって、どのくらいの利益まで個人事業のほうが有利かは異なります。
法人化が見えてきたら税理士への相談がおすすめです。
メリット3.経理の負担が少ない
個人事業で自分1人の場合、給与を支払うこともなく、給与計算などの事務負担はありません。
収入から必要経費を引いた金額が所得(利益)となります。
また、事業主は国民年金と国民健康保険に加入することが多いです。手続きや事務の負担はあまりありません。
一方で法人を設立して社長になると、会社から自分に給与を払います。
給与計算を行い、所得税や健康保険(協会けんぽ)、厚生年金などの源泉徴収をして納付しなければなりません。年末調整も必要です。
個人事業主でフランチャイズを始めるデメリット
一方、個人事業主としてフランチャイズを始めるデメリットは以下の通り。
- 信用度は法人に劣る
- 融資が受けられない場合がある
- 利益が増えると税負担も増える
1つずつ見ていきましょう。
デメリット1.信用度は法人に劣る
個人事業は法人のように定款認証が必要なく、一般的には登記しません。
法人よりも簡単に設立や運営ができる分、社会的な信用で法人よりも劣るところがデメリットです。
仕事の出来栄えなど関係なしに、個人との契約を避けて法人との取引を希望する企業もあります。
デメリット2.融資が受けられない場合がある
法人は会計が個人とは別であるのに対し、個人事業の場合は会計が同じため、事業に使う資金と個人の生活費の区別が曖昧になりやすいです。
そのため融資の審査が厳しくなりやすく、最悪の場合、銀行や金融機関からの融資が受けられないことも。
できるだけスムーズに融資を受けるためには、事業用と生活費の口座をきちんと分けて管理することが大切です。
デメリット3.利益が増えると税負担も増える
所得税は累進課税のため、所得金額が増えるごとに税率が上がります。
そのため、最終的には法人よりも多い税額に。
また、前々年の売上高が1,000万円を超えると個人事業税の課税対象になります。
税額だけで計算すると法人のほうが税負担が軽くなる場合もあるため、ある程度の利益が出たら法人化を考えるのもおすすめです。
法人でフランチャイズを始めるのメリット
法人でフランチャイズを始めるメリットは以下の通り。
- 社会的な信用力が高まる
- 経費計上できる枠が広がる
- 赤字額を9年間繰り越しできる
1つずつ解説していきます。
メリット1.社会的な信用力が高まる
社会的な信用力が高まることが、法人化する1番大きなメリットです。
法人化することにより、会社の会計が経営者個人とは別の財布になります。
個人事業のように家計と出費が混在する可能性が低くなるため、銀行や金融会社からの融資も受けやすくなるでしょう。
また、組織的に運営をしているため長期的な活動が予測できることから、継続的に取引ができる安心感を与えられます。
営業先や取引先からの印象もよくなることが期待できます。
メリット2.経費計上できる枠が広がる
個人事業主では経費にできなかった事業主自身の給与が、法人化すると経費として計上できるようになります。
他にも、生命保険の保険料、退職金の準備金なども経費計上可能。
経費計上できる金額が多いほど利益を小さくできるため、節税につながることもあります。
メリット3.赤字額を9年間繰り越しできる
個人事業では3年間しか繰り越せなかった赤字額を、法人化することで9年間繰り越すことができるようになります。
赤字額を繰り越せることで、もし翌期以降に黒字だったとしても赤字額が補填されるまで利益を少なく見せられます。
たとえば、赤字が100万円あったとすると、翌期以降に利益が100万円を超えるまでは、利益は0円です。
各種税金は利益額に課税されるため、節税につながるメリットがあります。
法人でフランチャイズを始めるデメリット
一方、法人でフランチャイズを始めるデメリットは以下の通り。
- 会社設立費用が発生する
- 利益が少なくても住民税が7万円課税される
- 事務負担が増える
こちらも、1つずつ見ていきましょう。
デメリット1.会社設立時に費用が発生する
法人(株式会社)で開業するには、登録免許税や定款認証などの手続き・書類の準備で最低でも22万円程度の費用が必要です。
登記などの手続きをしていることから、社会的な信用につながります。
しかし、事業を始めたばかりの頃などには、初期費用が重く感じられることもあるでしょう。
事業が安定するまでは個人事業からスタートするのがいいかもしれません。
デメリット2.利益が少なくても住民税が7万円課税される
法人には法人住民税均等割という、法人なら必ず払わなければならない税金があります。
法人住民税には、道府県民税と市町村民税の2種類あり、それぞれに均等割と法人税割という税金の設定方法があります。
このうち均等割では利益額に関わらず、一定の金額が指定されているため、赤字でも法人住民税の支払いが必要です。
たとえば、東京都の場合は、資本金が1,000万円以下、従業員数50人以下の企業で7万円の法人住民税が課せられます。
デメリット3.事務負担が増える
個人事業ではシンプルな会計処理が多く、混乱することも少ないですが、法人化することによって事務的な負担が増えることがデメリットです。
会計処理をきちんと行うことはもちろんですが、従業員への給与支払いなどにもしっかりとした事務処理が求められます。
自分のペースで事務処理をできる個人事業とは違い、決められた期間で処理しなければならないため、負担が大きく感じられることもあるでしょう。
状況によっては法人化も検討
個人事業主からのスタートがおすすめですが、状況によっては法人化も選択肢に入れる必要があります。たとえば、以下のような場合です。
- 見込み取引先が法人との契約しかしていない
- 出資を募って資金調達を行う
- 事業開始時から複数人の従業員を雇用
このような場合、個人事業主としての起業よりも法人化のほうが合っているといえるでしょう。
事業を始める際に取引先や資金調達などをどうするのかを把握し、法人か個人事業主かを判断しましょう。
フランチャイズの事業形態は状況に応じて選択しよう
フランチャイズ開業は自身の状況に合わせて事業形態を選択するとよいでしょう。
個人事業主も法人も、どちらもメリット・デメリットがあります。目先の税金やメリットばかりに気を取られることなく、状況に応じて判断しましょう。
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