政府が副業を推進する働き方改革の中で、いつかは起業してみたいと考える人は多いのではないでしょうか。
しかし、唐突に起業といっても難しく、まずは起業しやすい業種を知りたいと思いますよね。
この記事では、起業しやすい業種や共通の条件について解説していきます。
起業しやすい業種とその特徴、おすすめの業種などを知り、どのような業種で開業するかの検討材料にしてください。
目次
起業しやすい業種に共通する3つの条件
開業・廃業の状況のデータをもとに考えられる「起業しやすい条件」は次の通りです。
- 初期投資が少ないこと
- 在庫を持たないこと
- 市場や顧客のニーズがあること
大きくビジネスを始めてしまうと失敗のリスクが高まります。
また、自分では「良い」と思っても、需要がなければビジネスとして成り立ちません。
自分のやりたいことと、企業として継続していけるかどうかを見極める必要があるでしょう。
ここからは起業しやすい3つの条件について解説していきます。
1.初期投資が少ないこと
初期投資が少ないことは、起業のしやすさでは1番大きいでしょう。
例えば、大きな店舗を借り、厨房の設備などを整えて飲食店を始めるよりも、自宅でパソコン一つでできる業種のほうが起業のハードルは低くなります。
飲食店やコンビニなどは店舗が必須のため、初期投資は比較的高くなる傾向にあります。
近年では、特定の場所・事務所・店舗などに行かず仕事ができる業種を選択する人は少なくありません。
パソコンひとつで作業できる環境を整えることで、オフィスを借りる必要がなく賃料を浮かせることが可能です。
また、カフェや自宅、時にはリゾート地のような場所など、自分の好きな場所で働けることは魅力的であることも注目されている理由でしょう。
起業経験がなく「やってみたい」のであれば、まずは小さなビジネス(スモールビジネス)から始めてみてください。
2.在庫を持たないこと
多くの在庫を抱えずに済むことも、起業しやすいポイントの1つ。
はじめにたくさんの在庫を抱えてビジネスを始める形態の場合、万が一売れなかった時に不良在庫となります。
売れ残ったとしても、仕入れにかかった費用や在庫を保管する場所代がのしかかってくるため、赤字になることが想定されるでしょう。
資金が少ない起業の場合には、できるだけ在庫を多く持たずに済む業種を選ぶと安心です。
3.市場や顧客のニーズがあること
市場や顧客のニーズがあるということは、利益を出しやすい業種であると言えます。
どれだけ良い商品やサービスを思いついたとしても、需要がなければ利益を出すことは難しいためです。
一方で、すでにニーズがある業種での起業であれば、ある程度の利益が見込めるためスムーズに売上向上につながる可能性が高いでしょう。
ただし、一時的に流行している分野での起業は、流行が終われば立ち行かなくなるリスクもあるため、安定して需要が見込める業種を選んだほうが長期的には安心です。
開業率が高くて起業しやすい業種
中小企業庁が2021年に公開した「開廃業の状況」によると、開業率の高い業種は次の4つです。
- 宿泊業
- 飲食サービス業
- 生活関連サービス業・娯楽業
- 情報通信業
それぞれどのような特徴のある業種なのか、具体例を上げながら解説していきます。
宿泊業
厚生労働省によると、宿泊業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされています。
一方で、宿泊業と似た要素を含む旅館業の定義は「人を宿泊させる」こと。
生活の拠点を置くようなアパートや間借り部屋などは貸室業・貸家業であり、旅館業には含まれません。
宿泊場所さえ用意できれば、お客さんの宿泊後に部屋を清掃する程度で済むことが多いため、あまり労力がかからないことから人気があります。
最近では、インバウンド需要による宿泊施設ニーズの高まりによって、一般住宅を宿泊施設として提供する「民泊ビジネス」への参入も増加傾向です。
飲食業
飲食サービス業とは、お客さんの注文を受けて食料品やドリンクを提供する事業所のこと。
個人事業主によるカフェなどは昔から人気の業種の1つです。
最近ではフランチャイズによる飲食店の起業も増えてきています。
飲食店はエリアさえ間違えなければ、ある程度の利益が出せる印象があるため人気です。
また、店舗の内装などを、自分の理想とするコンセプトで揃えることを夢みる人もいるでしょう。
ただし、個人的に飲食業を開業するとなると、開業資金が高くかかることがネック。
開業予定エリアで採算がとれるかどうかのリサーチをしっかりすることがポイントです。
生活関連サービス業・娯楽業
生活サービス業とは、クリーニング業や理容・美容業のような古くからあるものや、女性起業家に人気なエステティック業やネイルサービス業などが分類されます。
自宅の一部でサービスを提供することが可能なことから、人気の業種です。
娯楽業とは、演劇や野球、相撲などの興行場の運営や、公演する出演者のこと。
例えば、雀荘の運営やフィットネスクラブの運営などはこの業種に含まれます。
顧客のニーズがあるエリアでの開業であれば比較的軌道に乗りやすいかもしれません。
情報通信業
情報通信業とは、インターネットに附随したサービスを提供する事業所のこと。
テレビやラジオなどもこの業種に分類されます。
個人事業として人気なのは、プログラミングやアプリ開発、映像制作やブロガーなどが活躍する業種です。
必要な機材が少ないことや自宅で開業できるため、低コストで始められることから注目されています。
廃業率が高く、起業失敗のリスクがある3つの業種
次に廃業率が高いとされている次の業種に注目してみましょう。
- 宿泊業・飲食サービス業
- 生活関連サービス業・娯楽業
- 小売業
宿泊業・飲食サービス業や生活サービス業・娯楽業などは、開業しやすい業種の上位でもあります。
開業しやすく、廃業もしやすい理由にはどのようなものがあるかに注目しましょう。
宿泊業・飲食サービス業
宿泊業や飲食サービス業は、開業がしやすい一方で、店舗の維持費や食材費・人件費などの運転コストがかかるといった特徴があります。
また、消費者と直接的な関わりのある業種であるため、流行や口コミなどの評判に売上が左右されやすいです。
メディアに取り上げられたことにより収入が増えるケースもある反面、コロナによる飲食業へのダメージのように世の中の流れなどに影響を受けやすい業種でもあります。
そのため、長期的に安定した事業運営ができるとは必ずしも言い切れません。
生活関連サービス業・娯楽業
生活関連サービス業や娯楽業は、生活に密着したものが多いことから需要がなくなることが少ない業種です。
最近では実店舗で販売している商品を、インターネットなどを利用して販売・収入を得るビジネスモデルを取り入れているところが増えています。
しかし、宿泊業や飲食サービス業と同じように消費者と直接関わりのある業種でもあることから、外的要因に左右されて廃業に追い込まれることもある業種です。
小売業
総務省によると、小売業とは「主として個人用又は家庭用消費のために商品を販売するものと、産業用使用者に少量又は少額に商品を販売するもの」と定義されています。
身近な例としては、商店街やショッピングモール、スーパーマーケットなど。
店の大小に関わらず「小売」に分類され、個人でも起業しやすい業種です。
しかし、集客の難しさや仕入れにまとまった金額が必要となる上に、在庫を抱えるといったリスクが高いため、廃業率が高くなっていることが予想されます。
初心者の起業におすすめの業種
起業しやすい条件を元に、初心者におすすめの業種を3つお伝えします。
- ネット上で完結する業種
- 婚活アドバイザー
- フランチャイズへの参入
どの業種も開業資金が比較的少なく、小さく始められるのがメリット。
軌道に乗れば徐々に事業拡大することもできるため、起業初心者さんにもおすすめです。
これから起業を考えている人は選択肢の一つにしてくださいね。
ネット上で完結する業種
起業する人が多いのがインターネット上で完結する事業です。
初期投資や運転資金が少ないことから、資金が少ない起業直後から安心して事業に向き合えることがメリット。
場所や時間にも縛られないため副業から始める人も少なくありません。
淡々と作業をこなすことが中心のため、対人関係が苦手な人にもオススメできる業種です。
婚活アドバイザー
婚活アドバイザーは副業として始めやすいことから参入が増えている業種。
本業と並行しながら地盤を固め、ある程度、事業が安定してきたら独立するパターンが多いようです。
婚活ビジネス市場の拡大や需要の高さから、安定した収入が期待できるのも魅力でしょう。
会員との面談やヒアリング、お見合いは休日に、メッセージのやりとりは本業の合間にできるといった「本業と両立しやすい」点も注目されている理由です。
婚活アドバイザーについては下記の記事で詳しく解説しています。
人との縁を繋げる仕事に興味のある方はぜひチェックしてください。
フランチャイズへの参入
フランチャイズに加入することで得られるメリットは、経営のノウハウが確立されていること。
個人事業主の多くが廃業に追い込まれる理由には、何かあった時にどの選択をすれば良いかわからず、事態を悪化させてしまうことがあります。
経営をしていると、市場ニーズの変化や物価の変動などいろいろなことが起こるもの。
さまざまな変化に対応するためのノウハウを確立・アドバイスをもらえるフランチャイズは、起業初心者でも安心して事業に集中できるでしょう。
個人ではコストが増える店舗型の業種での開業も、フランチャイズなら資金面のサポートをしてもらえることも。
本部にロイヤリティを支払う必要がありますが、経営ノウハウだけでなく、研修や経営状況を見てアドバイスをしてもらうこともできるなど多くのメリットがあります。
- 本部のブランド力を活かした集客ができる
- 未経験でも参入できる
- 銀行からの融資を受けやすい
開業のハードルの大部分を任せられるためスタートしやすいでしょう。
フランチャイズの基本については下記の記事で解説しています。
本部からの手助けを受けながら事業を始めてみたい方はご覧ください。
ライター
ライターは初心者でも気軽に始められる業種の1つ。
なぜなら、クラウドソーシングサイトにはライターの案件がとても多く、初心者向けの案件も揃っているためです。
クラウドソーシングとは、起業がインターネット上で不特定多数に業務を発注する業務形態のこと。
このようなサービスを活用して実績を作り、ライターを本業にする人も増えています。
人より詳しい何かを持っていたり、専門的なスキルや資格を持っていたりすると、ライターとして稼ぎやすいでしょう。
まずは副業で始めてみて、ある程度収入が見込めるようになったら起業することをおすすめします。
起業しやすい業種に関するよくある質問
ここでは、起業しやすい業種を探す人に多い質問をまとめました。
起業したいけどアイデアがありません。どうしたらいいですか?
起業アイデアがない場合は、以下のようなアプローチを試してアイデア出しをしてみると良いでしょう。
- 自身の経験を掘り下げる
- 市場のニーズを探る
- 既存の商品やサービスを改良する
- ブレインストーミング
大切なことは、何でもいいのでアイデアを出すことから始め、そのアイデアを練り上げていくこと。
起業アイデアの出し方については、「【簡単】起業アイデアの出し方・見つけ方8パターンと起業成功のコツ」で詳しく解説しています。
起業するには何から始めればいいですか?
起業を考えた時、まず始めたほうが良い項目は以下の通り。
- どのような事業を始めるかアイデアを出す
- どの形態で開業するか選択する
- 事業計画書を作ってみる
- 資金調達の方法を考える
- 事業用のクレジットカードを作っておく
特に、どのようなビジネスで起業するか、アイデア出しには多くの時間を費やしましょう。
廃業しやすい業種はなんですか?
廃業率が高い業種ワースト5は以下の通り。
- 宿泊業・飲食サービス業
- 生活関連サービス業・娯楽業
- 小売業
- 情報通信業
- 学術研究・専門・技術サービス業
(出典|中小企業庁:2021年版 小規模企業白書 第3節 開廃業の状況)
上記の業種は参入しやすい反面、競争率が高く失敗してしまうケースが想定できます。
そもそも起業した後の生存率は5年後に15%と言われています。つまり、85%は廃業しているということになります。
企業の成功率や廃業した企業の失敗原因については「起業の成功率はどのくらい?廃業に至った原因と成功のためにできること」で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
起業しやすい業種でも最初は小さく始めよう
起業をしやすい業種は、万が一、失敗したとしても大きな損害が出ないもの。
初期費用や在庫が少ないことや、ニーズがあり少しは利益を出せる見込みがある業種を選ぶと良いでしょう。
経営者としての経験がない場合には、小さく始めることを意識するのがポイント。
いきなり大きな事業を始めてしまうと失敗した時にリカバリーできなくなってしまいます。
まずは副業から始めたり、フランチャイズに加盟してサポートを受けたりしながら起業すると安心です。