カレー屋の開業に必要な資格は、店舗の規模や開業形態によって異なります。
開業時に「必要な資格が取得できていなかった!」と慌てることがないように、しっかりと必要な資格を理解しておきましょう。
この記事では、必ず持っておくべき資格を始め、持っておくと集客時に活かせる珍しい資格まで解説します。
準備期間の時間の余裕に応じて、どこまで資格取得を目指すのか検討してみましょう。
カレー屋の具体的な開業方法や、儲かるかどうかについての考察は「カレー屋の開業は儲かる?失敗から学ぶ成功のコツと年収や必要資金」をご覧ください。
目次
カレー屋の開業に必要な資格
カレー屋の開業に必要な資格は次の通りです。
- 食品衛生責任者
- 飲食店営業許可
- 防火管理者(収容人数が30人超える場合)
- 出店場所を管轄する保健所の営業許可(キッチンカーの場合)
- 「食品の冷凍又は冷蔵業」の許可(ネット販売の場合)
「飲食店の経営をするのなら調理師免許は必要だろう」と考える人も多いようですが、カレー屋の開業において調理師免許は必須ではありません。
もちろん調理師免許を持っておいて損はなく、お客さんの安心感につながり、集客効果が期待できる面もあります。
しかし、資格を持っていないからといって開業できないわけではないので安心してください。
カレー屋の開業に必要な資格についてざっくり理解したところで、続いては、【必須】・【状況に応じて】・【持っておいて損はない】の3段階に分けて資格を見ていきましょう。
【必須】カレー屋の開業に必要な資格
カレー屋を出すために必ず必要な資格は次の2つです。
- 食品衛生責任者
- 飲食店営業許可
特に、飲食店営業許可を取得せずに開業してしまうと違法になります。
2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられたりする可能性があるため、忘れずに申請を済ませておきましょう。
食品衛生責任者
食品衛生責任者とは食品衛生法で定められた「公衆衛生上必要な措置の基準」で配置が必要な、食品の衛生管理に関する責任者を指します。
カレー屋の開業では、食品衛生法に違反していないか・食中毒の心配がないかといった視点からチェックを行う担当者です。
食品衛生責任者がいないと、飲食店営業許可が受けられません。
食品衛生責任者の資格は、6時間ほどの養成講習会を受講して取得できます。
以下の1、2どちらかに該当する人は講習なしで取得可能です。
1 | 栄養士、調理師、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、と畜場法に規定する衛生管理責任者・作業衛生責任者、船舶料理士、食品衛生管理者(※1)の有資格者(※1)医師・獣医師・歯科医師・薬剤師、学校教育法に基づく大学で医学・歯学・薬学・獣医学・畜産学・水産学・農芸化学の課程を修めて卒業した者等 |
2 | 都道府県知事等が行う食品衛生責任者になるための講習会または都道府県知事等が適正と認める講習会の受講修了者 |
(参考:一般社団法人東京都食品衛生協会|食品衛生責任者について)
飲食店営業許可
飲食店営業許可とは、飲食店や食品の製造や販売を行う場合に必要な許可です。
路面店ではなくキッチンカーでの出店の場合、出店場所ごとに管轄する保健所の営業許可が必要になる点に注意してください。
営業許可を受けるためには食品衛生責任者を1名以上配置したうえで、7種類の申請書類を揃えて申請を行います。
営業許可がおりるまでに2〜3週間ほどかかるため、開業ギリギリではなく、ある程度の余裕を持って申請手続きを行うのがベストです。
飲食店営業許可の詳しい取得方法は「飲食店の営業許可申請のやり方とは?必要な書類や費用などの基本を徹底解説」で詳しく解説しています。
必要な書類や費用もお伝えしていますので、申請前にチェックしてください。
【状況に応じて】カレー屋の開業に必要な資格
状況に応じて必要になる資格もあるため、該当していないかチェックしておくと安心です。
- 防火管理者
- 「食品の冷凍又は冷蔵業」の許可
- PL保険への加入
一つずつ見ていきましょう。
防火管理者(収容人数が30人超える場合)
店舗の収容人数が30人を超える場合には、防火管理者の資格が必要になります。
防火管理者とは、建物などの火災等による被害を防止するため、消防計画を作成したり、防火管理上必要な業務を計画的に行う責任者です。
防火管理者になるためには、次の2つの要件のうち、どちらかを満たしている必要があります。
1 | 防火管理業務を適切に遂行することができる「管理的、監督的地位」にあること |
2 | 防火管理上必要な「知識・技能」を有していること(防火管理講習修了者、学識経験者等) |
一般的なのは、2つ目の防火管理講習を修了することで防火管理者の資格を得る方法です。
防火管理講習には、甲種・乙種の2種類があり、建物の収容人数によって種類が分かれています。
甲種の修了者はすべての防火対象物で防火管理者に選任されますが、乙種では300人以下の比較的小規模な建物の防火管理者にしかなれません。
カレー屋程度の規模であれば、【乙種】の講習修了で問題ないでしょう。
乙種の場合、おおむね5時間程度の講習を修了することで資格を取得できます。
7,000円の受講料で乙種防火管理講習を受けることができますので、参加して取得しておきましょう。
「食品の冷凍又は冷蔵業」の許可(ネット販売の場合)
作った商品を冷凍した状態で販売するためには、飲食店を開業するための営業許可とは別の許可も必要です。
営業許可の詳細に関しては、ネットショップの所在地を管轄する保健所へ問い合わせするとスムーズに進められるでしょう。
また、食品表示法に基づく栄養成分のラベル表示が必須で、以下の項目を記載する必要があります。
- カロリー(熱量)
- たんぱく質
- 脂質
- 炭水化物
- ナトリウム(食塩相当量)
消費税免税事業者や小規模事業者は、ラベル表示を免除されることもあるため、事前に保健所へ確認しておくとベストです。
PL保険への加入(キッチンカーの場合)
キッチンカーで移動販売をする場合には、PL保険(生産物賠償責任保険)への加入をしておくと安心です。
PL保険とは、お客さんに提供した食品が原因で相手に損害を与えてしまった場合に補償をするための保険。
たとえば、食中毒や異物混入による体調不良などが該当します。
PL保険への加入は任意ですが、加入していることが出店の条件になっているイベントやスポットがあるため加入しておいたほうが無難でしょう。
【持っておいて損はない】カレー屋の集客に役立つ資格
カレー屋の開業において取得は必須ではありませんが、持っておくと集客に一役買ってくれる可能性のある資格もあります。
- カレーマイスター
- カレーエキスパート
- 調理師免許
「珍しい資格を持っている=カレーのエキスパートかもしれない」というお客さんの心理をうまく使って集客につながるかもしれません。
カレーマイスター
日本野菜ソムリエが認定している「カレーマイスター」は、カレーをこよなく愛し、カレーに関する知識を持っていることが認められる資格です。
カレーマイスターの資格を取得するためには、日本野菜ソムリエが開催するカレーマイスターコースを受講し、受講終了後の試験に合格することで取得が可能になります。
カリキュラムは全4種類あり、カレーとスパイスの奥深さや魅力を知ることのできるコースです。
- カレーコミュニケーション:1時間
- カレーヒストリー:2時間
- スパイスサイエンス:2時間
- カレープロデュース:1時間
総額48,000円を支払うことで、カレーマイスターコースの受講と、受講後の試験を受験することができます。
カレーの知識を幅広く習得し、接客やカレー作りに活かしてみてはいかがでしょうか。
カレーエキスパート
日本カレー機構が認定している「カレーエキスパート」は、カレーに関する実務経験が必要な本格的なカレー資格です。
カレーに関する知識をより高め、カレーを愛する人を増やすことを目的に運営されているため、具体的なカレー選びのアドバイスなどカレーの専門家として活躍できるでしょう。
合格すると認定証やステッカーをもらうことができることから、集客時のアピールにもなります。
受験資格は下記の通りです。
- A.カレーメーカー及びカレー飲食店に1年以上従事していた者
- B.カレーのMD(仕入など)に1年以上従事していた者
- C.カレーを主として料理研究家で3年以上の実績を有する者
- D.カレーの食べ歩きの専門家、カレーマニア、愛好者
A〜Cは勤務先の従事証明書を、Dの場合はブログなどの訪問が立証できる資料の提出が必要になります。
取得方法は3種類あり、自分の都合の良い方法を選んで受験することができるのも魅力です。
- 認定試験を受験する
- 講習会を受講して簡易認定試験を受ける
- 提携養成講座を受ける
認定試験を受験する | 講習会を受講して簡易認定試験を受ける | |
試験内容 | 60分・カレー総合問題50問/5択形式・論文 | 30分・25問/5択形式 |
合格基準 | 80点以上 | 80点以上 |
講習時間 | – | 講習2時間①カレーの魅力学(定義、国民食化、カレーの種類)②カレー名店学③カレーをおいしくする作り方 |
受験料 | 3,500円 | ・講習料5,000円(税別、テキスト付)・認定料3,000円(税別) |
(参考:日本カレー機構|カレーエキスパート資格)
調理師免許
飲食店経営を考えると「調理師免許は持っておくべき?」と迷う人も多いですが、調理師免許がなくても飲食店の経営をすることは可能です。
ただし、持っておくことにより、お客さんからの安心感につながる可能性もあるため、持っておいて損はありません。
調理師免許を取得するには次の2つの方法があります。
- 専門学校や養成施設で学んで取得する
- 実務経験を積んだ上で調理師試験に合格する
どちらにしろ、一朝一夕に合格できる資格ではないため、資格取得のためにオープンを遅らせるよりは先に開業してしまったほうが良いと言えるでしょう。
実際に店舗経営を行いながら、養成施設や専門学校に通って資格取得を目指したほうが効率的です。
必須でない資格は時間に応じて取得検討を
カレー屋の開業に必要な資格は、状況に応じて必要なものから必須のものまで開業形態などによってさまざまあります。
資格によっては取得していないと違法になることもあるため、最新の注意を払って準備をしましょう。
一人では心配の場合、フランチャイズに加盟してカレー屋の開店を目指すことでフランチャイズ本部からのサポートを受けることもできます。
必要資格の取得漏れも防ぐことができるため、不安な人はフランチャイズ加盟も検討してみると良いでしょう。